夜の11時を過ぎた頃、静まり返った家の中でスマートフォンの通知音が鳴り響きました。
画面を見ると、知り合いからのメッセージが表示されていました。
『君が必要だ』という言葉に、一瞬心がざわつきました。
そんな言葉をかけられることは、特にこの歳になるとほとんどないからです。
しかし、その相手は友人でもなく、単なる知り合い。
私の心の中には疑念が渦巻きました。
57歳という年齢は、人生の転換期を迎える時期でもあります。
子どもたちはそれぞれ独立し、夫との二人暮らしが長く続いていましたが、この数年は夫の仕事が忙しく、会話も少なくなっていました。
そのため、家の中での孤独感が日増しに強まっています。
そんな中で、突然送られてきた『君が必要だ』という言葉は、心の奥に眠っていた不安を掘り起こしました。
実は、数ヶ月前に夫の浮気が発覚しました。
少しばかりの証拠を見つけた時の衝撃は今でも忘れられません。
夫はそのことを否定し、謝ってくれましたが、私の心には深い傷が残っています。
許せない自分と、許したい自分の間で揺れ動く日々。
心のどこかで、夫が本当に私を必要としているのかどうか、疑問を持ち続けているのです。
また、夫が定年を迎えるにあたり、私たちの生活設計に対する不安もあります。
今後の生活はどうなるのか、経済的な面も気になります。
夫が仕事を辞めた後、果たして私たちはどのように過ごすのか。
夫婦の関係がこのままでは、心配ばかりが募ってしまいます。
最近、友人たちとのランチの席で話題に出たことがあります。
それぞれが抱える家庭の事情や将来のことについて話すと、どこか心が軽くなるのを感じました。
しかし、自分自身の問題を直視するのはとても難しいことです。
友人たちは乗り越えるしかないよと言ってくれますが、私にはその勇気がまだ持てません。
今、私の心の中では迷いがあります。
夫にこの気持ちを伝えるべきか、それとも今のまま静かにしておくべきか。
何度も考えましたが、言葉にする勇気が出ません。